義理と人情

月曜日
朝から1~4年生の美術を教えに学校に行った際
バロア君に会いました。
彼は私が水泳を指導してきた代表チームの選手の1人
専門はクロール

久しぶりだな
元気だったか?

ちょっと寂しげな目で
チームを首になった事を話してくれました。
練習に来ずにサッカーしてた事がコーチにバレたのが理由らしい。

そうだったのか〜

授業があったので
長くは話せなかったものの

お昼前にまたばったり

そこは
学校出た直ぐの所で
若い連中が集まる場所

選手の宿舎にも帰り辛くなったらしく、新しく知り合った友達の家に世話になってる事が分かりました。

その時も町に買い出しに行く用があり軽く会話して別れ、バスに乗ろうと歩きだす

でも何か気になる

バロアの目は寂しげに何か消化し切れない感じがした。

道を引き返し
バロアに会いに行きました。

もし、まだ水泳したいなら今日から来たら良い!コーチのタコタに出て行けと言われたんなら気にするな。
アイツもずっとチームから離れてて遊びほうけてる。気にする事は何もない。
俺がコーチだろ
ちょうど今日からスイム練を再開する。大会も出ればよい。君がやりたいなら。

と声をかけ
夕方待ってるからと別れました。

その日の夕方
1カ月ぶりにバロアがプールに来ました。
良く来たなー
おかえり

と声をかけ
練習スタート

みんなが久々の練習に根を上げてるところをバロアは黙々とメニューを見ながら泳いでいました。

やるなー

1カ月ぶりの泳ぎとは思えない。

そして練習が終わり
プールから出る時に
バロアが声をかけてきました。

こうたろう
僕は大会には行けない。
その日程に学校のテストがあるんだ。
今日はこたろうが声をかけてくれたからここに来たんだ。
ありがとう


胸が熱くなりました。


彼は賢い子です。
1カ月練習を離れて
これから練習しても自分が大会に出ても結果を出せないと分かっているようでした。

学校のテストの方が大切
大会には出ない
チームメイトとも疎遠

それでも
今日の練習に来て泳いで挨拶をしてくれた彼

ただ私にありがとう言うために
来てくれた彼の気持ちが本当に嬉しくてたまりませんでした。

まだ終わってませんが
やってきて
良かったと思いました。

英語も通じない
アムハラ語も片言
水泳指導も未熟

それでも8カ月間一緒にやってきました。

大会の結果も
水泳のタイムも
正直大した問題じゃない

義理と人情

日本語も詳しくありませんが
彼のおかげで
私の方が大切な事を教えてもらえました。

エチオピアに来て良かったです。